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悪人(2010)

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ストーリー★★★(★3つ)
閉塞感★★★★(★4つ)

たまたま仕事が早く終わったので、初日に観てしまった。今日を逃すといつ行けるかわからないので。深津ちゃんが賞を受賞した効果で、もっと混んでいるかと思ったが、『告白』のときのような激混みっぷりはなかった。まぁ、結局は大入り満員だったようですが^^

さて、深津ちゃんが賞を取ったこともあり、李相日監督ってこともあり、さらにベストセラーになった小説が題材ってこともあり、まぁ、否が応でも期待は膨らんでしまう。
物語はあまりにシンプルでもあるので、殺人犯と恋に落ちた女性との逃亡劇ということにしておこう。
ここに殺された女性やその女性の家族、男友達、殺した男の家族、いっしょに逃亡する女性とその家族がからむ。そこには、ただの人間模様だけでなく、日本のどこにでもある「都会でない田舎」の閉塞感が浮き彫りになっていく。ストーリーは、まだ公開中なのでこのぐらいで^^;



悪人とは何か? 一体誰が悪人なのか? 悪人である人間にも背景があり、被害者側にも思わぬ背景がある。いったいどっちが人間として非なのか。これはやはり結論はでない。
ドラマのジョーカーのように、「お前に明日は来ない!」バッキューーーーーン!!!なんて気絶させて謎の島に送り込むなんてことはできないのだ^^;

でも、この映画の描き方だと、被害者の女性にまったくもって思いやりが持てなかった。演じているのが、大好きな「いつかちゃん@満島ひかり」であるにも関わらず、まったく愛を微塵も感じることができなかった。彼女の父親役の柄本明と宮崎美子の悲しみはわかるんだけど、あなたたちにとっていい娘だったかもしれないけど、どうしてそんな両親に愛されながらもあんな子になってしまったんだろう・・・・という思いを引きずってしまった。それも、悪人が悪人を生むわけではなく、また「悪人とは何か?」という疑問を発するための演出だったのかもしれない。

妻夫木君は、非常にがんばっていたが、以前レビューを書いた"No Boys,No Cry"のときの演技に非常によく似ているので、あまり新味はなかったかな。キャラ的にもあの亨によく似ている。場所も九州エリアだし^^; そして、逃亡のロードーム―ビーだし^^;
深津ちゃんは、ある意味新境地。今まで、不器用で恋愛も奥手的な女子を演じることが多かったが、今回は濡れ場もばっちり演じている。ただ、驚いちゃうほど深津ちゃんの新境地! って思うほどじゃぁ、なかったかな。
グッと来る演技を見せてくれたのは、妻夫木君演じる祐一の祖母役の樹木希林だ。時が止まったような同じルーティンワークの日々に、突如事件が起きて、とまどいながらも長年培ったルーティンワークを変えることもできず、ただただ静かに戸惑う祖母。基本的に、泣いちゃう!!!って感じのシーンはあるようでなかったが、唯一、そのばあちゃんにモロ師岡氏が絡むシーンがあるんだが、そこは思わず涙腺が滝りそうになりましたTT
観られる方はチェックポイントですTT いや、本当にボーっとするシーンからほんの少し気持ちが変わるシーンまで、ちょっとした表情で演技ができる本当にスゴイ人だと思う。

基本的に、昔のフランス映画のような終わり方だ。
でも、最後に少しだけ、小さなほんの小さな希望が見える(ゆれる)。

日本映画というよりもちょっと韓国映画的な雰囲気がある映画だったかも^^ 
もちろん、韓国映画になるなら主演は、ハ・ジョンウかな^^; 

どうも、九州男好きの私は九州によくわからない妄想を描きがち(笑)だが、地方都市のさらに田舎の閉塞感って、ものすごいものなんだろう。私は東京の都下の外れで育ったが、そこでも時間が止まり、同じルーティーンワークで、高齢者のルールですべてが動き、行動範囲も知り合いも全部地元でつながっている世界だった。「ここにずっといたら、埋没してしまう!」と学生時代に危機感から親の反対を押し切って、ひとり暮らしを始めた。
人間生きていくのは、本当は同じ毎日を繰り返すことが正しいのかもしれないが、10代後半から20代の多感な時期に、そこにしか居場所がない人生を送るのは、悲しく、何かで発散を求めても仕方ないように思う。『フラガール』にしても、『69 sixty nine』にしても、そのあたりの社会的背景の根底を描きたいのが李相日監督らしさなのかもしれない。

映画『悪人』公式サイト
by lifeis4989 | 2010-09-12 02:53 | 日本映画

ヒジョ~~~に偏った視点で、思い切り勝手に選んだ映画やドラマの感想とその周辺のお話。


by lifeis4989