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"静かなるドン"シリーズ(1991~2001)

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ストーリー★★★(★3つ)
照之度★★★★(★4つ)

深夜にテレビで放映されていたこともあったりして、とびとびでは観たことがあったこの作品。でも、今回"勝手に香川照之まつり"開催につき、まとめて一気に、第1巻~第12巻+THE MOVIE(話の展開としては、第11巻の前部分)の合計13巻を観た。いやいや、これが思った以上に楽しめた作品だった。

ざっくり言うと、新撰組組長だった父親が死んだことで、下着メーカーで普通のサラリーマンをしていた近藤静也(香川照之)が跡目を継がされるというお話。
任侠の世界よりも有名な下着デザイナーになることを夢見てい静也は、最初跡目を継ぐことにまるで興味がない。というより争うことが苦手な静也にはイヤでイヤで仕方ない。でも、日本一の権力を誇る新撰組がまとまらないこと=各地で激しい抗争を生む火種となってしまう……。そんなことから、静也はイヤイヤ跡目を継ぐことを承諾する。そして、承諾する条件として、昼間は任侠の人だということを隠し、下着デザイナーとして生きることを許してもらうのだった。

静也が下着デザイナーにこだわる理由は、単にデザインを考えるのが好き、ということともうひとつ、憧れ女性・秋野さんの存在も大きい。しかし、デザイナーとしての才能はいつまでも開花せず、仕事も男としても秋野さんの前では、超情けない静也。完全なる片想い状態が続いている。ところが、サングラスをかけ任侠の姿でいるときに偶然秋野さんと遭遇する。自信なげな瞳をサングラスで隠すことで、秋野さんにも男らしくふるまうことができる静也。さらに、怒りと矛盾が静也の中に頂点に達したとき、彼の遺伝子に潜む恐ろしい任侠の血が火を噴く。

本当の自分は、こんなにも恐ろしい人間だったのか……。
それとも、才能もなくいつまでもうだつが上がらないままの情けない自分が本当の姿なのか。
任侠とデザイナーという二重生活と愛する秋野さんの間で、切ない自問自答を続けていく静也……。

というのが、基本ベースのお話。
ここに新撰組と敵対する組との抗争や秋野さんとの色恋話が絡んで毎回ちーーとも進まない・・・、というお決まりのストーリーが展開される。



そう、話は、水戸黄門的お決まりパターン。でも、おもしろいのだ。
特に、香川照之ファンには、ぜひとも通しで第1巻から一気に観てほしいと思う。というのも、このシリーズは非常に長いタームで撮影されているというところがポイントなのだ。

第1巻の制作は、1991年。照之は当時、24歳。デビューして2~3年という時期だ。第6巻までは、1993年に制作されている。
"日本魅録"でも、鹿島監督に
「一作品で一度は必ず最低30回、多い時で70回、最高記録トラック108という回数の本番を繰り返させられたものだった」と自ら書いていた。
この文章を読んだときには、「香川照之にそんなにダメ出しせんだろう!?」と疑心暗鬼で読んでいたが、"静かなるドン"をよく見てみると、そのことが非常によく理解できるのだ。第1巻の頃の、香川照之は、今の香川照之とはちょっとっていうか、かなり違う。あの年齢の役者にしてはうまいけど、セリフ回しの間の取り方とが、やっぱり若い。でも、この若い感じが、イヤイヤ跡目を継がされてしまったボンボンの若の役に雰囲気も事情にマッチしていたのだ。しかしながら、この雰囲気は彼が計算して作ったものというよりも若さによるマッチングの勝利だったような気がする。

そして、第7巻から第10巻は、1996年制作となる。30歳になり、橋田ドラマや大河などもこなすようになった香川照之の成長をここで少し観ることができる。アクションの動きの切れも格段によくなり、ボディラインにも"作ってきたな"というこだわりがみえ始める。ただまだ、2000年代以降に個性的な映画に出まくるオーラがあるかというと、正直まだそうでもない。

この作品で笑ってしまうぐらい変化が出てくるのが、1999年制作のTHE MOVIE以降だ。前作まではボンボン風のちょっと長めのツーブロックスタイルの髪型だったのに、THE MOVIEのときは、短髪・・・・!!!!!
こ、これって、も、もしかして・・・、あの日本兵の伸びかけヘアか!? と一目でわかる髪型・・・。そう、香川照之の名を知らしめた中国映画「鬼が来た!」の撮影が1998年。
そうだ、静ドンの第10巻とTHE MOVIEの間に、香川照之は中国で麻袋に入っていたのだ!!!!!

撮影中もストーリーなさがらに、中国語だけが飛び交う中で長時間麻袋に入れられてまま放置され、体調も壊すほどひどい目に合いながら、窮地に追い込まれる日本兵の狂気とリアルを見事に演じたこの"鬼が来た!"という作品。彼自身、この映画が自分の人生を変えた、とよく言っているが、静ドンを観ると、"鬼が来た!"の使用前・使用後の変化が本当に手に取るようにわかるから、おもしろいのだ。

しかし、THE MOVIE以降は、近藤静也というより"香川照之"という個性が強くなってしまったのと、オヤヂ度が一気に増してしまったことから、いつまでも恋にも仕事にもうだつが上がらないお坊ちゃまキャラの若、という設定には、正直無理が見え隠れし始める・・・。香川照之版の"静ドン"が一番人気だったというが、第12巻で終わっているのは、本人が若(近藤静也)より早く長してしまったことで終わらざる終えなかったんだな、ということがよーーーーくわかった^^; だって、下着デザイナーとして"僕が目指す道はなんなんだ!"と切なく悩んでいる静也が、リストラされて新橋にたたずむオヤヂにしか見えなかったし^^;(気分的には、すでに"トウキョウソナタ"な香りが・・・^^;)、 さわやかな恋のシーンもどこか演じても、"やさぐれてしまった枯れ感"が漂ってしまうのだった・・・^^; 「若っ!!!」には見えないっす!!!!

そして、いやいや、"静ドン"を観て、「鬼が来た!って作品はこんなにも人を変えてしまうなんて、よっぽどの撮影だったんだなぁ・・・・^^;」ということを改めて思うのだった^^;

と、ストーリーというより"静ドン"から香川照之の成長ストーリーを観ることができるのだ。まぁ、そんな観かた、ファンじゃなきゃ、まったく興味がないかもしれないけど^^;
でも、他の役者で続編とかドラマ編とか作られているが、香川編の静ドンが一番、気持ちの葛藤や切ない想いが描かれているという。任侠モノが苦手な人でも十分楽しめる仕上がりになっていると思う。

ここ数年の香川照之の映画でのプロフィールなどを観ると、この作品のことに一切触れていないものが多いけど、キャリアの中ではこの作品、意外と重要だったと思うので、プロフィールにも入っていたらいいのに、と個人的には思う。この手のものはキャリアイメージには、イマイチってことなのかしら??

あ、そうそう、脇を固める側近役の倉田保昭もかっちょいい!
歳を取っても回し蹴りは鮮やか^^ 御歳63歳!!!がんばれ!!

静かなるドン DVD-BOX

JSDSS

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by lifeis4989 | 2009-07-26 15:54 | 日本映画

ヒジョ~~~に偏った視点で、思い切り勝手に選んだ映画やドラマの感想とその周辺のお話。


by lifeis4989